私は 腕をまくり上げて 母に苦しいけれど
痰の吸引を するわね。
ゴロゴロを 取らないと 治らないの―
頑張って呉れるわね?
母は 私の目を じっと見て頷いた。
母の命を 自分で救う!!
母に負荷のない様に 迅速に 確実に吸引する。
吸引した 痰が 気管に落ちる可能性はある。
しっかり 胸の音を聴いて サチュレーションを計りながら
母の指先に 私はサチュレーション測定器を付け
上腕に 血圧計を 巻き
母の 舌 唇 顔色を照らし合わせ 気を付けて
吸引を開始した。
やはり 肺炎 粘っこい 痰が なかなか引けず
吸引器のパワーを ほんの少しだけアップした。
苦しさから 身体をねじり
ごぼごぼと 咳を繰り返す母。
頭の中で 秒数を カウントしながら
私は 休憩を三分程 入れては 数回 吸引を
繰り返す。
母は苦しさから 口を閉じようと力を入れる。
私は 力を抜いてくれたら 早く終われるのよ!と
母の唇を しっかり開けて 気管から 喉の辺り 口の中を 吸引。
大分 母は涙を流し
痰がらみの咳こみ、
これで 深い部分の痰が 上にあがる。
母上 じょうずよ! 思いっきり咳をして頂戴!
粘膜を傷つけない様に 慎重に 痰を引いてゆく。
母の心臓の脈が 早い。
少し 休んでから 次は鼻からの吸引!
ベッドを平らにして 顎が突き出す様に母の首にタオルを入れたら。枕もどかした。
母上
もう一度 頑張って!お願いね。
嫌よね!でも 私を信じて。
大丈夫
鼻から くくっと 気管迄 チューブを入れた。
母は 身体をよじり 苦しみで両腕を伸ばし
私を 静止しようと もがいている。
チューブは12ミリから10ミリに 変えた。
鼻からだと 深く入るので 大分一気に引けた。
様々な測定値 母の顔色 呼吸音を聴いて
吸引を止めた。
母には 良く頑張ったわね、偉い偉い
辛いね、 ご免なさい ご免なさいねと
抱き締めて 暫く 胸と背中を 擦りながら
涙を拭いて 私も 額の汗を拭いた。
母の頑張りのお陰で 綺麗な呼吸音に近づき
ゼコゼコした音も 大分 静かに成った。
酸素が戻るのを 待ちながら サチュレーションを
幾度も 測定した。
良かった 吸引した痰は気管に落ちず 出血もない。 硝子タンクを覗くと 粘りある痰が沢山ある。
まだまだ 母には 痰の吸引で辛さを与える。
でも 母ならば 頑張って呉れる!
今迄の素晴らしい頑張りの様に―
母が 落ち着いて来た……
熱は まだ38:3度。 カロナールの効果は30分後。
私は時計を 見ながら
母に 水分補給してみましょう、ゆっくりで良いからね
と ベッドを60度位に 少しずつ 上半身を上げていく。
母の座位を 抱き上げて バスタオル クッション等でキープして キッチンで トロミつけた麦茶
バニラアイスクリーム トロミつけた冷たいカルピスを ゆっくり少しずつ 介護スプーンで
母の口に運んだ。
痰の吸引 発熱で 喉が渇いて居る母は
冷たくて 美味しいと 数回 呟いて呉れた。
慎重に ゆっくり 母の身体を潤して
30分 この高さで 休憩して貰った。
又検温をした。 なかなか下がらない。
又 7時間経過したら 解熱剤カロナールを
医師の指示を仰ぎ 母に服用させよう。
オデコにも アイスノンを載せると
母は 有り難うねと 辛いのに……娘の私にも
又お礼を。
母上 今はお熱 咳 痰で 苦しいのだから
お礼なんて 言わないで良いからね
どうも有り難う と 私は幾度も母に囁いた。
お仏壇に向かって 私は 必死に祈り続けた。
酸素飽和状態 血圧 脈も 今は大丈夫だが
急変の心配があり 私は母のベッドの横に座り
自分の薬を 沢山の水分で服用した。
夜になり 大分 冷え込んで来た。
母が アイスノンで 寒くない様に 首元まで
優しく お布団を掛けた。
次のカロナール投与で 熱を早く下げたい!
一つ一つの母の辛さを 早く取り去りたく
気持ちは焦るけれど
母には ずっと隣に居るから
早く お風邪が治る様に 母上も
一緒に頑張ってね。
可哀想に ご免なさい。
明るく優しく声を掛けた。
直ぐに 良くなるから 少し寝て良いのよ……
母は 私の顔を見ながら
眠りに着いた。
夜間のオムツ交換は 夜間ヘルパーに連絡しよう! 私も 体力温存しないと と タイマーを
掛け コートを着こみ 母の隣で 少しの仮眠タイム。
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